私のふるさと〜犬森県我無蘭市夢見本気村について〜
今日のお題は「私のふるさと」
というわけで今日は私のふるさとについて書き記したいと思う。
ただし個人情報を晒すのには抵抗があるので、架空のふるさとについて書きたいと思う。
私が生まれ育ったのは、犬森県の南部、我無蘭市(がむらんし)の更に最南端、陸の孤島と呼ばれる夢見本気村(ゆめみがちむら)である。
夢見本気村(ゆめみがちむら)
村の人口はわずか二百人。私が幼かった当時の夢見本気村は電気や水道が通っておらず、蝋燭の灯りや井戸水で生活するという江戸時代さながらの暮らしを送っていた。ジャンプも水曜にならないと本屋に並ばないし、インターネットも低速で一枚の画像を表示するのに2週間はかかっていた。
私はまだ幼いながらに夢見本気村の田舎さ、不便さに嫌気がさしており、大人になったら都会に出て電気も水道を自由に使える文明的な生活を送りたいと思っていた。
ただそんな私にも村で好きな場所が一つあった。
村で唯一の娯楽施設、ドリームパーク(通称ドリパー)である。
私はこのドリームパークの目玉である大観覧車に乗るのが大好きで、休みのたびドリパーに行きたいと親に懇願したものである。大観覧車は電気が通ってないので全く動かないが、それでも私はこれに乗ることが大好きだったのだ。
私がドリパーを好きな理由は大観覧車の他にもう一つあった。
ドリームパークのPR大使、ドリパー兄さんである。
彼は365日中、340日はドリームパークの園内のベンチに寝そべっているので行けば大体会うことができるのだ。
彼は幼かった私に色々な話をしてくれた。
東京で事業に失敗してこんな所にいること…
夢見本気村の村長たちが村民達から集めた自治会費でコンパニオンを呼んで宴会をしていること…
村の外れにある本気神社(がちじんじゃ)には決して近寄ってはならないこと…
彼の話を聞いて私はまだ幼いながらに「がんばるぞ」と思った。
もう一つ、私がこのふるさと夢見本気村で強烈に記憶に残っている事件について書きたいと思う。
迷いの森殺人事件である。
迷いの森
夢見本気村は村の面積の69%が森というフィンランドみたいな土地なのだが、
その中でも村外れにある森は一度足を踏み入れたら二度と帰っては来れないという伝説がある恐ろしい森で、迷いの森と呼ばれていた。
私が幼い頃、ここで殺人事件が起きたのである。
村のお金を使い込んだ村長がこの迷いの森で惨殺されたのだ。
身体中の穴という穴に村の名産品・うまみ棒を突っ込まれた状態で木に吊るされていたのだ。
村の名産品・うまみ棒。一見するとただの棒だが、米粉でできており食べられる。味は全くしない。
当時この事件は大々的に報道され我無蘭新聞の三面を飾ったので、覚えている人も多いと思う。
犯人が捕まったのは事件から3日後。
犯人はドリパー兄さんだった。
すんでのところで息を吹き返した村長の証言によって明らかになったのだ。
村の金でコンパニオンを呼んで宴会をしていた村長をうらやましく思っていたドリパー兄さんによる、私怨による犯行だった。
ドリパー兄さんは逮捕され、それから私はドリームパークに行くこともなくなった。
私は諸行無常を感じた。
夢見本気村にはいい思い出も嫌な思い出もたくさんあるが、
人生に迷った時、疲れた時、ふと思い出してしまう。ふと懐かしんでしまう場所。
そういう場所を人は「ふるさと」と呼ぶのではないだろうか。
夢見本気村は架空の村なので私のふるさとでもなんでもないが、
遠きにありて思うものーーー
それが「ふるさと」なんだと私はそう思うのだ。