モサ日記

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5分小説「腕毛デビル」

ビラビラビラビラ………

 

ビラビラとはためく羽根の音を知沙香はうるさいと思いつつ、熱心にピーナッツを口へと運んでいた。

季節は八月を越えていた。七月は知沙香にとって思い出したくない月であった。

 

アイツが…嫌い…

 

アイツというのは知沙香の専門学校の同級生・モリシャである。

モリシャの本名は森田佑樹なのだがなぜだかモリシャと呼ばれていた。

 

ピーナッツを口へ運ぶそのリズムはまぎれもなくエイトビートであった。

 

モリシャの話もそこそこに知沙香は神社に向かった。

神社というのは彼女の行きつけの喫茶店の異名である。

 

喫茶ハービス。この店のことを神社と呼ぶのは、ここ熱海でも知沙香一人であった。

 

熱々の珈琲を口に運びつつ知沙香は参考書を開いた。

 

「数学ⅡB」と表紙に大きく書かれたその参考書はまっさらであった。