ノベライズ版「アナと雪の女王」
新しい記事を書きたくないので、昔書いてたブログで唯一残ってた記事をもう一度掲載します。
これを書いたのは2年ぐらい前ですが、未だにアナ雪は見ていません。
ノベライズ版「アナと雪の女王」
ヒュオオオオオオオオオオオオ…
ここは南極大陸。マイナス50度の寒風吹きすさぶ氷の大地。
この南極に古(いにしえ)より脈々と続く魔法使い(ウィザード)の一族が静かに暮らしていた…
「エルサ!エルサ起きて!もう朝よ!」
もう日も高いというのに一向にベッドから起き上がる気配のない姉エルサを叩き起こそうとする妹・アナ。しかしエルサは布団にしがみついたまま離そうとしない。
「うるさい…私はまだ起きたくないのよアナ。知っているの?朝の布団の重力は通常の五倍なのよ」
「寝言は寝て言いなさいエルサ。いい加減起きなきゃ。今日は週に一度のグランマに会いに行く日でしょ」
「行きたくない…グランマに会ったって、どうせまた小言を言われるだけだし」
アナの姉・エルサは魔法使い(ウィザード)の一族の頂点に立つ「女王」であり、二ヶ月前に加冠の儀(かかんのぎ)を終えて35代目の女王に即位したばかりであった。とはいえまだ子供であるエルサは、先々代の女王であるグランマから週一で魔法のレッスンを受けていたのだ。
「まったくもう…エルサは女王の自覚がないんだから」
「私は女王になんてなりたくなかったのよ。何だったらアナ、あなたが女王になればよかったのに」
「まあ、なんてことを。長女が女王の座に就くのは我らクイーン家の習わしであるというのに」
「わかってるわよ…」
エルサはしぶしぶベッドから起き上がり、歯を磨いて服を着替え、寝ぼけ眼でグランマの館へと向かった。
「エルサ!約束の時間に一時間も遅れたね。まったくあなたは女王の自覚というものがないのかしら」
エルサの予想通りグランマの小言が飛んだ。
「はいはい、すいませんでしたよ。次からは遅れませんよ」
悪態をつくエルサ。
「まったく…憎たらしいったらありゃしない」
この日のグランマの魔法のレッスンは五時間にも及んだ。
ヘトヘトに疲れ果て、やっとの思いで帰路につくエルサ。
「あ~疲れた。アナー!帰ったわよー!今すぐ温かいスープを入れてちょうだい」
「フヘヘ…おかえりなさいでヤンス」
アナの代わりに返事をしたのは下級使い魔のオラフだった。
「オラフ、アナはどこ?」
「お嬢様なら用事があるとか言って今しがた出て行ったでヤンス」
「そうなの。まああなたでいいわオラフ、温かいスープを入れてちょうだいな」
「かしこまりましたでヤンス」
オラフの入れた温かいミネストローネを飲んで一息つくエルサ。
「ふう、生き返るわ」
「エルサ様はどうしていつもやる気がないでヤンス?」
「使い魔の分際で言葉が過ぎるわねオラフ。その雪でできた身体を火炎魔法で溶かしてやろうかしら」
「ヒィィィ~~~お助けでヤンス~~~~」
「冗談よ。私ね、まだ17歳なのよ。私がグランマの魔法のレッスンを受けたり、帝王学を勉強したりしている間、私と同世代の女の子たちは皆でショッピングを楽しんだり、ボーイフレンドとデートしたりしているのよ。なんで私だけがこんな退屈な毎日を過ごさなきゃならないの」
悲痛な表情を見せるエルサ。それをよそにオラフは間抜け面をさらしている。
「エルサ様は女王なのだから我慢しなきゃならんでヤンス」
「本当に溶かしてやろうかしら」
その時であった。
家の外から歌声が聴こえてきたのだ。
「何かしらこの歌声。この声は、アナ!?」
エルサが家のドアを開けると、猛吹雪の中アナが一人高らかと歌っているではないか。
「ありの~ままの~姿見せるのよ~」
「アナ!あんた寒くないの!?」
「少しも寒くないわ。聞いてエルサ。エルサは女王だけど、自分のやりたいように生きるのが一番だと思う。エルサに必要なのは一歩を踏み出す勇気よ。踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となるの。ありのままに。ありのままに生きて!エルサ!」
「アナ…」
妹からの心のこもったエールに、エルサの瞳から一雫の涙がこぼれた。
「ふふ、南極じゃ涙もすぐに凍っちゃうわね。でも分かったわアナ。私、自分らしく生きてみようと思う。ありのままに…」
「エルサ…!」
「 二人とも、スープが冷めるから早く中に入るでヤンスよ〜〜〜〜」
アナとエルサ、南極大陸の冷たくも優しい風が二人を包み込んだ。
アナと雪の女王 ~fin~
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